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福岡高等裁判所 昭和24年(ネ)210号 判決 1950年7月31日

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は一原判決を取消す。被控訴人が昭和二十三年七月一日附をもつて大分県宇佐郡長峰村大字大根川字宮の本百三十五番地の一所在田九畝十九歩について、同村大字佐野財田賢策をその売渡の相手方とした長峰村農地委員会の売渡計画に対してなした承認はこれを取消す。訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とする。」との判決を求め被控訴代理人は主文と同旨の判決を求めた。

当事者双方の事実上の陳述及び証拠の提出、援用、認否は、控訴代理人において甲第九乃至第十二号証を提出し、当審証人奈良政喜、笹木コトの証言を援用し、乙第三乃至第六号証の成立を認め乙第三号証については告示のあつたことは否認すると述べ、被控訴代理人において乙第三乃至第六号証を提出し、甲第九乃至第十二号証の成立を認めた外は、いずれも原判決書当該摘示と同一であるからここにこれを引用する。

理由

まず、被控訴人の本案前の抗弁(一)、すなわち、長峰村農地委員会が本件土地について定めた売渡計画につき、被控訴人のなした承認が行政訴訟によつて取消を求め得る行政処分に該当するか否かの点について考えてみると、いわゆる抗告訴訟たる行政訴訟は行政庁の違法な処分によつて公法上の利益を侵害された場合に裁判所に訴えてこれが是正を求めるものであるから右行政訴訟の対象となり得る行政処分は行政庁から公共団体又は国民に対して行う公法上の法律行為又はこれに準ずる行為で、これ等の者の権利義務に法律上の効果を及ぼすべき処分に限定せらるるものと解すべきものなるところ、自作農創設特別措置法第十八条の売渡計画に対する承認というのは県農地委員会が売渡手続を実施する市町村農地委員会の定めた売渡計画を審査確認する行為であつて、単に行政庁の内部間において、上級行政庁から下級行政庁に対してなされる意思表示に過ぎず、売渡計画の樹立とは異つて外部に対し表示せられることがなく又これによつて直接に国民に対し具体的に何等法律上の効果を及ぼすものではないからいわゆる抗告訴訟の対象たる行政処分には該当しないものといわなければならない。

よつて前記被控訴人の承認の取消を求める控訴人の本訴請求はこの点において失当であるから他の主張に対する判断を省略してこれを棄却すべきである。

されば原判決は右とその理由を異にするも、控訴人の本訴請求を排斥した点においては結局正当であつて、本件控訴は理由がないから民事訴訟法第三百八十四条第二項第八十九条を適用して主文のように判決する。(昭和二五年七月三一日福岡高等裁判所)

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